シングリックス

帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用」

シングリックス筋注用(一般名:乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)は、帯状疱疹のワクチンとして使われます。
『Shingles』(帯状疱疹)と、製品を開発したグラクソ・スミスクライン社のベルギーの製造拠点である「Rixensart」から派生して『Shingrix』(シングリックス)という名前が付けられました。
国際共同第Ⅲ相臨床試験では、日本人を含む37,000人以上が参加し、50歳以上の帯状疱疹の予防効果と安全性が確認されました。
現在、このワクチンは日本を含む世界18ヶ国で使用されています(2022年1月時点)。

シングリックスの特徴

シングリックスは、帯状疱疹ウイルスそのものを使わず、代わりにウイルスの表面に存在する糖タンパク質E(gE)を活用した、初の組換えサブユニットワクチンです。
すでに水痘帯状疱疹ウイルスに免疫を持つ人に対して、gE抗原をアジュバントと組み合わせて接種すると、特定のCD4陽性T細胞と抗体が誘導され、帯状疱疹の予防効果が発揮されます。
シングリックスの帯状疱疹の発症予防効果は、50歳以上を対象としたZOSTER-006試験では97.2%、70歳以上を対象としたZOSTER-022試験では89.8%であり、効果は9年間持続することが確認されています。
これらの臨床試験により、シングリックスの有効性と安全性が確認されました。

シングリックスの対象について

シングリックスの接種対象は50歳以上の方ですが、年齢に上限はありません。
帯状疱疹の予防には生ワクチンである水痘ワクチンも効果的ですが、免疫機能が低下している方や免疫抑制治療を受けている方には使用できません。
そのため、生ワクチンを受けられない方には、シングリックスのような組換えサブユニットワクチンが唯一の選択肢となります。

シングリックスの投与方法と投与スケジュール

シングリックスは、50歳以上の成人に1回0.5mLを2カ月間隔で2回、筋肉内に接種します。
1回目の接種から2カ月を超えた場合でも、6カ月後までに2回目の接種をすれば大丈夫です。

シングリックスを接種する上での注意点

以下の場合は、シングリックスの接種を避けなければなりません。該当する事項がある場合は、必ずお伝えください。

  • 明らかに発熱している場合(通常37.5度以上)
  • 重篤な急性疾患にかかっている場合
  • 過去にこのワクチンに含まれている成分でアレルギー症状を起こしたことがある場合

上記以外でも、医師の判断により接種が行われない場合があります。

シングリックス接種直後またはその後、血管迷走神経反射が現れることがあります。
この反射は、注射時の痛みや恐怖、興奮などの刺激が迷走神経を介して中枢に伝わり、心拍数や血圧の変動を引き起こすものです。
気分の不快感、めまい、ふらつき、失神などが生じることがありますので、接種後は背もたれのある椅子に座るなどして体調変化に注意してください。

シングリックスの副反応について

副反応はワクチンによって引き起こされるもので、一般の医薬品の副作用と同じく、さまざまな症状が報告されています。
頻度の高い副反応としては、注射部位の痛みや腫れ、赤みが挙げられます。
さらに、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、疲労、悪寒、発熱なども報告されています。
また、まれですが、ショックやアナフィラキシーといった重大な副反応が起こる可能性もあります。
シングリックス接種後にショックが疑われる症状(冷や汗、めまい、顔面蒼白、手足の冷えなど)やアナフィラキシーが疑われる症状(全身のかゆみ、じんま疹、喉のかゆみ、ふらつき、動悸、息苦しさなど)が現れた場合は、速やかに医師の適切な処置を受けるようにしてください。

シングリックス筋注用を接種した当日の過ごし方

接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保つように心がけてください。
入浴は普段通りで差し支えありませんが、接種部位を強くこすらないように注意してください。

他のワクチンとの併用について

シングリックスは生ワクチンではないため、他のワクチンとの接種間隔につき特に制限はありません。
医師が必要と認めた場合には他のワクチンと同時に接種することが可能です。

接種から数日間は発熱や接種部位の腫れなどが出ることがあります。
短期間に複数のワクチンを接種する場合は、発熱や接種部位の腫れがないこと・体調が良いことなどを確認し、接種の可否をご相談ください。

なお、医療機関によっては異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔ルールを定めている場合もあります。
詳しいスケジュールはご相談ください。

妊娠中または授乳中の方、ご高齢の方への接種に関して

妊娠中の方については、予防接種の有益性が危険性を上回ると判断される場合に接種を行います。
授乳中の方については、予防接種の有益性および母乳栄養の有益性を考慮した上で、授乳の継続または中止を検討します。
ご高齢の方の接種については特に問題ありませんが、健康状態や基礎疾患の有無などを十分に考慮して接種の可否を判断します。
なお、シングリックスの接種対象者は50歳以上の成人なので、小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。

帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用」の費用

シングリックス筋注用は保険適用外の薬剤なので、全額自己負担となります。

当院のシングリックス接種費用は1回22,000円(税込み)です。
シングリックスは2ヵ月間隔で2回の接種が必要ですので総額44,000円(税込み)となります。

シングリックスと弱毒生水痘ワクチンの比較

製品名帯状疱疹ワクチン
「シングリックス®」筋注用
乾燥弱毒生
水痘ワクチン「ビケン」
種類不活化ワクチン生ワクチン
接種回数2回1回
帯状疱疹発症抑制効果50歳以上:97.2%
70歳以上:89.8%
51.3%
神経痛抑制効果50歳以上:100%
70歳以上:85.5%
66.5%
効果の持続9年以上5年程度で効果減弱
料金44,000円(税込)
※2回分の費用計
8,800円(税込)
特徴予防効果が高い
持続期間が長い
高価
接種が1回・安価
接種不適当者が多い
(生ワクチンのため)

FAQ

シングリックスを注射すれば、帯状疱疹にかかることはないのですか?

シングリックスは、帯状疱疹の発症を完全におさえるものではありません。
ただし、シングリックスを接種しておけば、発症しても症状が軽くて済みますし、帯状疱疹後神経痛などの後遺症の予防にもつながります。
痛みなどの後遺症が残るとQOL(生活の質)が著しく低下するため、ワクチンで帯状疱疹の発症を予防することはとても重要です。

水ぼうそうにかかったことがないのですが、シングリックスを打っておくべきですか?

水ぼうそう(水痘)は罹患しても自覚がないことがあります。
しかし、日本の成人のおよそ9割は体内に水痘・帯状疱疹ウイルスを持っていると考えられています。
そのため、水ぼうそうに罹患した自覚がなくても帯状疱疹を発症する可能性は否定できません。
帯状疱疹の発症率は加齢にともない高くなり、80歳までに3人に1人は発症するといわれています。
そのため、水ぼうそう罹患歴がない、あるいは不明な場合でもシングリックスを接種することは有意義であると考えられます。

帯状疱疹になったことがあるのですが、シングリックスを打つ意味はあるのですか?

帯状疱疹発症歴がある場合、すでに抗体を獲得している可能性がありますが、帯状疱疹は再発する可能性のある病気です。
シングリックスは再発予防にも効果が期待できますので、接種することをおすすめします。

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