変形性股関節症の痛みを抑え、関節を保護するためには、リハビリテーションと運動療法が非常に重要です。これらは病状の進行を予防し、生活の質の維持・向上を目指す上で中心的な役割を果たします。
運動療法
運動療法は、変形性股関節症における疼痛の改善や身体機能の向上に有効であることが示されています。
• 推奨される運動の種類: 有酸素運動、筋力増強訓練、水中運動が、痛みの緩和と機能改善に効果が期待できます。
• ホームエクササイズ: 自宅で手軽に行えるホームエクササイズは、安全性が高く、有害事象の報告も少ないとされています。
• 運動強度: 運動強度については一定のコンセンサスは得られていませんが、痛みに合わせた無理のない範囲での継続が重要です。
• 注意点: 高齢者や転倒リスクの高い患者では、運動療法が負担となる場合や、転倒のリスクを伴うことがあるため、注意が必要です。
• 骨粗鬆症の観点から: 骨粗鬆症の予防においても、ウォーキングなどの荷重を伴う運動や、筋力増強訓練、バランス訓練が推奨されており、これらは転倒予防にもつながります。
物理療法と疼痛対策
変形性股関節症の疼痛管理には、特定の物理療法も有効であると報告されています。
• 温熱療法: 股関節症に対する温熱療法は、疼痛緩和と機能改善に有効であり、推奨されています。
• 超音波療法: 超音波療法は臨床で広く用いられていますが、その有効性は運動療法との併用が前提であり、単独での効果のエビデンスは不足しています。
• 電気治療: 経皮的電気神経刺激(TENS)や電磁場療法については、変形性股関節症を対象とした質の高いエビデンスが不足しており、効果は不明確です。
• 薬物療法以外の疼痛対策: 骨粗鬆症の文脈ではありますが、慢性疼痛に対しては物理療法が用いられることがあります。ただし、個々の物理療法に対するさらなる検証が必要です。
関節保護と生活習慣の改善
関節への負担を軽減し、病状の進行を予防するためには、日常生活における対策も不可欠です。
• 体重管理: 過体重は股関節への負担を増大させるため、適切な体重管理は関節保護と進行予防に有効です。患者教育と体重管理の組み合わせは、活動の質の改善に寄与すると示されています。
• 歩行補助具や装具の活用: 症状に応じて、杖や歩行器などの歩行補助具を使用することは、股関節への負荷を軽減し、疼痛の緩和や歩行の安定化に役立ちます。
• 患者教育: 変形性股関節症に関する患者教育は、病状の理解を深め、運動療法や体重管理を含む治療への積極的な参加を促し、症状管理や進行予防に大きく貢献します。
これらのリハビリテーションや運動療法、および生活習慣の改善を組み合わせることで、変形性股関節症の痛みや機能障害を管理し、関節の健康を長期的に維持することが期待されます。