変形性膝関節症(膝OA)は、多くの患者さんが痛みや機能低下に直面しており、この疾患が進行するにつれて、その影響は日常生活の質(QOL)や活動性にも大きく及ぶことが示されています。
膝関節の変形性関節症と向き合う生活の「リアル」
1. 初期から進行する膝の痛み
◦ 変形性膝関節症の主な症状は膝の痛みです。
◦ 初期には、だるさや鈍重感、こわばりとして感じられることがあります。
◦ しゃがむ、立ち上がるなどの体重をかける動作で特に痛みが生じます。
◦ 病態が進行すると、自発的な痛みや夜間痛が加わり、安静時でも痛みに悩まされることがあります。
◦ 階段の昇降時や座った状態からの立ち上がり時に膝蓋骨(お皿)とその周囲に痛みが出現することもあります。
2. 膝の引っかかりや動かしにくさ
◦ 急に痛みや膝の引っかかり感(キャッチング)、または**膝が動かなくなる感覚(ロッキング)**を伴って可動域が制限される場合、半月板損傷や関節内遊離体といった機械的な問題が合併している可能性も考えられます。
◦ 進行すると、膝関節の関節構成体が変性し、膝関節の可動域が伸展・屈曲方向に制限されることがあります。
3. 歩行や移動の困難
◦ 痛みを避けるように歩く**「疼痛回避性跛行(とうつうかいひせいはこう)」**を呈することがあります。
◦ 関節の破壊が重度になると、歩行時に膝関節が横に動揺する**「横ぶれ(スラスト)」**が生じることもあります。
◦ 膝の痛みが続くことで、活動性が低下し、移動機能が著しく障害されることがあります。
4. 身体機能と生活の質の低下
◦ 痛みが持続すると、患者さんの身体機能の低下や精神的な苦痛につながります。
◦ 変形性膝関節症は、運動器の障害によって移動機能が低下する**「ロコモティブシンドローム」の代表的な疾患**であり、要介護状態へ移行するリスクが約6倍もあると指摘されています。
◦ 骨粗鬆症による骨折と同様に、変形性膝関節症による機能障害や痛みは、生活の質(QOL)に大きく影響します。QOLは身体の痛み、運動機能、活力、日常生活の身体的役割機能、精神的役割機能、社会生活機能、全体的健康度、心の健康など、多項目で評価されます。
5. 疾患との向き合い方と治療への参加
◦ 患者さん自身が、自分の疾患の病態を理解し、それに合わせた生活様式や治療法に積極的に関わることが重要であるとされています。
◦ 医師は患者さんが病態を理解できるようサポートし、痛みの原因を把握して速やかに治療を行うことが大切だと考えられています。
◦ 単純X線画像で関節の変化が軽度でも症状が強い場合、MRIなどで膝関節内部の変化を客観的に捉え、適切な診断と治療を速やかに行うことが強調されています。
このように、変形性膝関節症は単なる膝の痛みにとどまらず、患者さんの身体活動、精神状態、ひいては社会生活全体に影響を及ぼす、生活に深く関わる疾患であると言えます。