膝に痛みを感じ、医療機関を受診すべきタイミングについて、変形性膝関節症の観点からご説明します。変形性膝関節症は進行性の疾患であり、症状の変化に注意し、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。
膝が痛い場合の受診タイミング
変形性膝関節症の主症状は膝の痛みですが、その現れ方は病気の進行度によって異なります。以下のような症状が現れた場合は、医療機関の受診を検討してください。
• 初期症状:
◦ 膝にだるさや鈍重感を感じる場合。
◦ 特に朝起きた時などに、膝のこわばりを感じる場合。
◦ しゃがむ、起立するなどの荷重動作時に膝に痛みが生じる場合。
• 症状の進行や合併症を示唆するサイン:
◦ 何もしていない時でも膝が痛む自発痛がある場合。
◦ 夜間に膝の痛みで目が覚める夜間痛がある場合。
◦ 階段の昇り降りや、座った状態からの立ち上がり時に膝蓋骨(膝のお皿)とその周囲に痛みが生じる場合(膝蓋大腿関節症の可能性)。
◦ 急に痛みや引っかかり感を伴い、膝が伸ばしきれない、または曲げられないといった可動域制限が生じた場合(半月板損傷や関節内遊離体などの合併が疑われる)。
◦ 歩行時に痛みを避けるように歩く**疼痛回避性跛行(かばい歩き)**が見られる場合。
◦ 膝関節に**腫れ(腫脹)や水がたまっている状態(膝蓋跳動)**が認められる場合。
◦ 膝の痛みが持続し、活動性が低下していると感じる場合。
• 診断と治療の必要性:
◦ たとえ単純X線検査で膝関節の形態的な変化が軽度であるか、あるいは認められない場合でも、患者さんの訴える痛みが強い場合は、膝関節内で進行している損傷(例:軟骨病変、半月板病変、滑膜炎など)を客観的に捉えるために、MRIなどのより詳細な画像検査が必要となることがあります。
◦ 膝の痛みが持続すると、活動性の低下を招き、身体機能低下や精神的苦痛につながることが指摘されています。また、変形性膝関節症は移動機能の障害を引き起こし、重症化すると要介護状態への移行リスクが約6倍になることも示されています。これらのリスクを考慮し、早期に病態を正確に把握し、適切な治療を開始することが、生活の質(QOL)の維持や健康寿命の延伸に繋がると考えられます。
膝の痛みは、進行性の疾患である変形性膝関節症の兆候である可能性が高く、症状の有無や重症度にかかわらず、自己判断せずに医療機関を受診し、専門医の診断とアドバイスを受けることが推奨されます。