骨粗鬆症は骨折という重篤な合併症を伴う疾患であり、早期からの予防戦略が極めて重要です。
予防の基本は以下の通りです。
• 若年期からの骨量獲得: 骨粗鬆症予防の最も重要な側面は、成長期に高い最大骨量(PBM)を十分に獲得することです。骨密度は20歳前後でピークを迎えるため、この時期の良好な食習慣や運動習慣が将来の骨量に大きく影響します。骨密度の遺伝率は40~80%とされますが、栄養や身体活動、適切な紫外線暴露などの生活習慣因子も骨密度向上に不可欠です。特に1~4歳と12~17歳は骨密度が顕著に増加する「スパート期」と報告されています。
• 食事: 骨の健康維持にはカルシウム、ビタミンD、ビタミンKの十分な摂取が不可欠です。骨粗鬆症治療のためには1日700~800mgのカルシウム摂取が勧められており、ビタミンDは魚類から、また1日15分程度の適度な日光暴露によっても体内で合成されます。一方で、リン、食塩、カフェイン、過度なアルコールの摂取は骨の健康を損なう可能性があるため、控えるべきです。
• 運動: 適切な身体活動、特に荷重のかかる運動や筋力訓練は、骨密度維持・上昇に有用です。例えば、ウォーキング、ジョギング、ダンスなどの動的荷重運動は腰椎や大腿骨近位部の骨密度上昇に効果を示します。また、高齢者においては、筋力・バランス訓練が転倒予防に繋がり、結果的に骨折リスクを低減させます。Sinakiらの研究では、背筋強化訓練が椎体骨折の予防にも有効であることが示唆されています。
• 生活習慣の改善:
◦ 喫煙は抗エストロゲン作用やカルシウム吸収抑制作用により、骨折リスクを1.26倍に、大腿骨近位部骨折リスクを1.84倍に高めるため、禁煙が強く推奨されます。
◦ 過度な飲酒(1日3単位以上)もカルシウム吸収を阻害し、骨粗鬆症性骨折リスクを1.38倍に、大腿骨近位部骨折リスクを1.68倍に増加させるため、摂取量を1日24g未満に抑えるべきです。
◦ 女性においては、閉経後に急速に骨量が減少するため、閉経後女性の急速な骨量減少者を早期にスクリーニングし、骨量のさらなる減少を食い止める「二次予防」も重要です。
これらの複合的なアプローチを通じて、骨粗鬆症の発症リスクを低減し、骨折を防ぐことが健康寿命の延伸に繋がります