整形外科

骨粗鬆症の診断の重要性

骨粗鬆症の診断は、単なる骨の老化現象ではなく、**骨折という重篤な合併症を伴う「疾患」**である骨粗鬆症に対して、早期からの予防と適切な治療を行うために極めて重要です。

日本においては、人口の急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者数は年々増加しており、現時点では約1300万人と推測される重要な社会課題です。特に、椎体骨折や大腿骨近位部骨折は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を著しく低下させ、寝たきりの原因となるだけでなく、死亡率も上昇させる深刻な合併症です。大腿骨近位部骨折の年間発生数は2007年には約14.8万人に達し、国際的に減少傾向にある中で日本は増加傾向を維持しています。

骨粗鬆症は、「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大した骨格疾患」と定義されており、この骨強度は「骨密度」と「骨質」という二つの要因で規定されます。診断の重要性は、これらの骨強度の低下を見極め、わずかな外力でも骨折しやすくなる「脆弱性骨折」のリスク増大を早期に察知する点にあります。一度骨折すると、その後の新たな骨折発生の危険性が高まるため、初発骨折の予防が非常に重要とされています。

診断は、骨密度測定だけでなく、既存骨折の有無、年齢、性別、生活習慣(喫煙、飲酒、運動不足、栄養)、既存骨折の家族歴、ステロイド薬使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症などの多様な危険因子を総合的に評価することによって行われます。このような総合的な評価は、個々の患者の骨折リスクを正確に把握し、最適な予防・治療法を選択するために不可欠です。

また、骨粗鬆症は要介護状態の主要な原因であるロコモティブシンドローム(ロコモ)健康寿命の延伸にも直結します。多くの医師が骨粗鬆症を単なる老化現象と捉えている現状があるため、疾患としての認識を深め、適切な診断と治療に繋げることが、個人の健康維持と社会全体の負担軽減に繋がるのです。

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