骨粗鬆症の危険因子は多岐にわたり、骨折リスクを大きく高めます。日本における約1300万人の患者数からも、その対策の重要性が伺えます。
年齢は骨折発生に大きく寄与する独立した危険因子です。骨密度は20歳前後でピークを迎えますが、その後加齢とともに減少し、特に女性では閉経後に急速に骨量が減少します。大腿骨近位部骨折の発生数は、日本で過去20年間にわたり増加傾向にあり、80歳以上の高齢群では特に発生率が高いことが示されています。
性別も重要な因子で、骨粗鬆症の有病率は女性、特に閉経後の女性で男性より著しく高いと推定されています。40歳以上の女性の約19.2%(腰椎)から26.5%(大腿骨頚部)が骨粗鬆症と診断されています。
既存骨折は、骨密度とは独立した最も重要な骨折危険因子です。一度骨折すると、その後の新たな骨折発生リスクが有意に高まります。椎体骨折の既往がある場合、新規椎体骨折のリスクは約1.6倍に上昇します。
生活習慣も骨の健康に大きく影響します。
• 喫煙は抗エストロゲン作用やカルシウム吸収抑制作用により、骨折リスクを1.26倍、大腿骨近位部骨折リスクを1.84倍に高めます。
• 過度な飲酒(1日3単位以上)もカルシウム吸収を抑制し、骨折リスクを1.38倍、大腿骨近位部骨折リスクを1.68倍に増加させます。
• 運動不足は骨量の減少を招き、活動的な身体活動は転倒による大腿骨近位部骨折リスクを約30%低下させるとの報告があります。
• 栄養素の不足、特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンKの不十分な摂取は骨量減少に繋がり、骨折リスクを高めます。
その他の重要な危険因子として、骨折の家族歴(特に両親の大腿骨近位部骨折歴)があり、大腿骨近位部骨折リスクを2.3倍に高めます。また、ステロイド薬の長期使用は骨形成低下と骨吸収亢進を介して骨折リスクを1.71~2.63倍(骨粗鬆症性骨折)、2.48~4.42倍(大腿骨近位部骨折)に増加させます。関節リウマチも骨粗鬆症性骨折リスクを1.5~2.4倍に高めることが示されています。
これらは続発性骨粗鬆症の原因ともなり、男性や閉経前の女性では特にその可能性が高いとされています。糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病も骨密度とは独立して骨折リスクを上昇させるため、総合的な評価が不可欠です