整形外科

9.脊髄損傷後の運動機能回復を支える理学療法

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脊髄損傷は、交通事故や転落、スポーツ外傷などによって脊髄が損なわれ、運動や感覚機能に障害をもたらす重篤な外傷です。損傷の部位や程度によって症状は異なり、四肢麻痺や下肢麻痺、感覚障害、排泄機能障害など多岐にわたります。理学療法は、脊髄損傷後の患者が可能な限り運動機能を回復し、自立した生活を送るために欠かせない役割を果たしています。

評価と目標設定

理学療法ではまず、患者の残存機能を正確に評価することから始まります。損傷レベル(頸髄・胸髄・腰髄)や完全・不完全麻痺の程度を把握し、筋力や関節可動域、感覚、バランス能力などを詳細に検査します。これらの評価をもとに、患者一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立て、短期・長期の目標を設定します。目標は、ベッド上動作や車いす操作、歩行獲得など、生活に直結する機能を中心に設けられます。

運動機能回復に向けた理学療法

脊髄損傷後の理学療法では、運動機能の再獲得と二次的障害の予防を両立させることが重要です。初期段階では、関節拘縮や褥瘡、呼吸機能低下を防ぐために、関節可動域訓練や体位変換、呼吸訓練などを行います。徐々に体幹や四肢の筋力強化、バランス訓練、立位訓練、歩行練習など、より積極的な運動療法へと進めていきます。不完全損傷の場合は神経可塑性を活かした反復練習や電気刺激療法も併用し、残存神経機能の再活性化を促します。

自立支援と社会復帰へのサポート

理学療法士は、単に身体機能の回復を目指すだけでなく、患者の自立と社会参加を視野に入れた支援を行います。車いすや歩行補助具の選定・操作練習、段差昇降や公共交通機関の利用練習など、実生活に即した訓練を提供します。また、作業療法士やソーシャルワーカーなど多職種と連携し、住環境整備や就労支援、心理的サポートも含めた包括的なリハビリを展開します。

まとめ

脊髄損傷後の理学療法は、失われた機能を補うだけでなく、残存能力を最大限に引き出し、患者の「できること」を広げていく取り組みです。適切な評価と段階的な運動療法、生活支援を組み合わせることで、患者が再び自分らしい生活を取り戻せるよう支援します。脊髄損傷後のリハビリは長期的な取り組みとなりますが、理学療法士はその歩みを継続的にサポートする重要な存在です。

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