整形外科

9.女性に多い理由とは?変形性股関節症と性別・骨盤の関係

変形性股関節症が女性に多く見られる主な理由は、その病態の大部分が寛骨臼形成不全に起因する二次性のものであること、そして寛骨臼形成不全が女性に多発するという点に集約されます。

具体的には以下の点が挙げられます。

有病率の男女差: 日本における単純X線診断による変形性股関節症の有病率は全体で1.0%~4.3%ですが、男性が0%~2.0%であるのに対し、女性では2.0%~7.5%と高い有病率を示しています。

日本における主な原因病態: わが国では、変形性股関節症の約80%が寛骨臼形成不全や発育性股関節形成不全(DDH)といった骨盤・大腿骨の形態異常に起因する二次性股関節症であると報告されています。これらの先天的な股関節の形成不全は、特に女性に多く発症することが知られており、これが女性の罹患率が高い主要な要因となっています。

寛骨臼形成不全の影響: 寛骨臼形成不全は、股関節症の発症と進行における重要な危険因子です。メタ解析の結果でも、寛骨臼形成不全(外側CE角が25°未満)は股関節症の発症と有意に関連することが示されています。この形成不全により、関節軟骨や関節唇(特に前上方から上方)に早期から損傷が生じやすく、これが関節の変性進行を促します。

その他の骨形態の特徴: 変形性股関節症患者では、健常者と比較して寛骨臼の前後径が上下径より小さい、前方開角が大きい、大腿骨前捻角が大きいといった特徴的な骨形態が報告されています。これらの形態的な特性も、関節への不均一な負荷を引き起こし、変性を加速させる可能性があります。

骨盤・脊椎への影響: 股関節症の進行に伴い、脚長差や骨盤側傾、腰椎側弯といった脊椎・骨盤のアライメント異常が併存することがあります。これは、股関節の変形が全身の姿勢や動作に影響を及ぼすことを示しています。

骨密度との関連: 興味深いことに、股関節症患者では一部の部位(Ward三角、腰椎、大腿骨頚部など)で骨密度が健常者よりも高値を示すことが報告されており、これは骨粗鬆症のような骨量低下を原因とする骨折とは異なる病態であることを示唆しています。

他の関節疾患との共通性: 変形性膝関節症など、他の変形性関節症においても女性に有病率が高い傾向が見られ、これは関節の変性疾患全般において、女性に特有の生物学的または生活習慣上の要因が存在する可能性を示唆しています。

総じて、日本の女性に股関節症が多いのは、女性に高頻度で認められる寛骨臼形成不全という基礎疾患が背景にある二次性股関節症が圧倒的に多いためであると考えられます。

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