人工股関節全置換術(THA)後の生活と、人工股関節と上手に付き合っていくための復帰プランは、患者さんの生活の質(QOL)を大きく向上させる上で非常に重要です。手術によって疼痛が著しく緩和され、その効果は中長期にわたって維持されることが報告されています。
術後の生活と復帰のコツは以下の通りです。
• QOLと身体機能の改善:
◦ THAにより、術前の下肢機能の程度にかかわらず、有意な改善が見られます。特に、日本の生活様式に合わせた正座や和式トイレなどの深屈曲を要する動作についても、一定の改善が得られるとされています。
◦ 身体活動性も改善しますが、健常者の水準に達しない場合や、中長期では低下するとの報告もあります。
◦ 就労やスポーツへの復帰も、術前と同等またはそれ以上のレベルで可能であり、特に水泳、サイクリング、ジムでの運動など、移動を要しない活動は増加する傾向にあります。精神状態の大きな変化は少ないものの、メンタルヘルスへの働きかけがQOLをさらに向上させる可能性も指摘されています。
• リハビリテーションの重要性:
◦ 術前通院リハビリテーションは、術後3ヵ月以内の疼痛軽減、臨床成績の改善、入院期間の短縮に有意な効果を示すことが示されています。
◦ 術後リハビリテーションも、疼痛軽減や機能改善に有用です。
◦ ホームエクササイズと患者教育を組み合わせたプログラムは、患者の活動の質と身体機能の改善に貢献し、THAへの移行を遅らせる効果も報告されています。ウォーキングなどの荷重を伴う運動、筋力増強訓練、バランス訓練は、骨密度の維持や転倒予防にも繋がり、術後の生活において重要です。
• 人工股関節を保護するための日常生活での工夫:
◦ 適切な体重管理は、股関節への負担を軽減し、病状の進行を予防するために不可欠です。
◦ 症状に応じて、杖や歩行器などの歩行補助具を適切に使用することで、股関節への負荷を軽減し、疼痛緩和や歩行の安定化に役立ちます。
◦ 患者教育は、変形性股関節症を理解し、運動療法や体重管理を含む治療に積極的に参加し、症状を管理する上で大きく貢献します。
これらの要素を組み合わせることで、人工股関節と上手に付き合い、活動的で質の高い生活を長期にわたって維持することが期待されます。