装具やサポーターは、変形性膝関節症の治療において有用であるとされています。ただし、その効果の推定値に対する確信は中程度(エビデンスの強さ「B」)とされ、実施は「弱い(実施することを提案する)」推奨となっています。
以下に、整形外科での装具やサポーターの実際の効果と注意点、選び方に関する情報をまとめます。
変形性膝関節症に対する装具療法(歩行補助具を含む)の効果と注意点
• 全般的な有用性:
◦ 変形性膝関節症に対する装具療法は、鎮痛効果や機能改善効果を認め、有用性が示されています。
◦ しかし、その効果には研究間で高い異質性が認められており、使用する装具の種類や膝関節症の進行度が効果に影響を与える可能性が高いとされています。
◦ そのため、装具療法は「弱い(実施することを提案する)」推奨です。
• 鎮痛効果:
◦ 装具療法は、VAS、WOMAC (pain)、KOOS (pain)といった評価において、大きな鎮痛効果を有することが明らかになっています。
◦ 膝装具と外側楔型足底板は大きな効果を認めましたが、靴や一本杖は有意な効果が認められませんでした。
• 機能改善効果:
◦ 装具療法は、WOMAC (physical function)、KOOS (ADL function)などの機能評価において、大きな機能改善効果が認められています。
◦ 鎮痛効果と同様に、膝装具と外側楔型足底板は大きな効果を認めましたが、靴や一本杖は有意な効果が認められませんでした。
• 歩行能力改善効果:
◦ 一部の研究では歩行補助具が歩行能力を有意に改善したと報告されています。しかし、6分間歩行テストのメタ解析では有意な改善効果は認められませんでした。
• 副作用(合併症):
◦ 重篤な合併症は報告されていません。
◦ 膝装具を用いた装具療法では、皮膚の刺激感や不快感などの合併症が報告されており、その発生リスクは高いとされています(リスク比 3.65)。
◦ しかし、これらの副作用は治療中止に至るほどの重篤なものではなく、装具を着脱することで改善しやすいため、他の薬物療法や手術療法に比べて対処が容易であると考えられています。
ヒッププロテクター(大腿骨近位部骨折予防用)
• 骨粗鬆症による転倒骨折のリスクが高い集団に対しては、治療用装具であるヒッププロテクター(HP)が、大腿骨近位部骨折の予防に有効であるとされています。
• ただし、在宅の高齢者においては、コンプライアンス(着用順守)が低いため、その有効性には疑問符がつけられています。
装具の選び方と使い方(示唆される点)
• 目的を明確にする: 膝の痛みや機能改善が主な目的であれば、膝装具や外側楔型足底板が効果的である可能性が高いです。
• 個別の状態に合わせる: 研究効果に高い異質性があることから、患者さんの膝関節症の進行度や、痛みの種類、活動レベルなどを考慮して、最適な装具を選ぶことが重要です。
• 副作用への注意と対処: 膝装具による皮膚の刺激感や不快感などの副作用がある場合は、装具の調整や着脱、清潔保持などの対処法を医師や専門家と相談することが大切です。
• 歩行補助具の検討: 歩行能力の改善を目的とする場合、一本杖など歩行補助具も選択肢になりますが、その効果は限定的である可能性があるため、他の治療法との組み合わせも検討すべきでしょう。
• 骨粗鬆症と骨折予防: 大腿骨近位部骨折のリスクが高い場合は、ヒッププロテクターの着用も選択肢となりますが、継続的な着用が重要です。
装具やサポーターの選択と使用については、個々の患者さんの状態を考慮し、整形外科医や理学療法士などの専門家と相談しながら決めることが最も重要です。