整形外科

7.手術治療の最前線:人工股関節置換術の流れと成績

変形性股関節症に対する手術治療の最前線として、人工股関節全置換術(THA)84〜97%と非常に高いと報告されています。

THAの主な流れと期待される成績

QOLと機能の改善 THAにより疼痛は著しく緩和され、その効果は中長期にわたって維持されます。術前の下肢機能の程度にかかわらず、術後には有意な改善が見られ、特に術前機能が低い患者ほど改善率が大きい傾向があります。日本の生活様式に合わせた正座や和式トイレなどの深屈曲を要する動作についても、一定の改善が得られると報告されています。身体活動性についても改善が見られますが、健常者の水準に達しない場合や、中長期では低下するとの報告もあります。

術後合併症 THAに伴う合併症として、以下の頻度が報告されています。

    ◦ 脱臼: 初回THAで0.5〜5%、再置換術後で5〜20%。手術進入法や使用する骨頭径、摺動面(通常型かdual mobility型か)の選択によって頻度が変動します。後方進入法は脱臼リスクが高いとされますが、後方の軟部組織修復を行えば前方進入法や側方進入法と同等の脱臼率になるとのメタ解析も報告されています。

    ◦ 深部感染: 0.1〜1%。

    ◦ 静脈血栓塞栓症(VTE): 深部静脈血栓症(DVT)が10〜30%、肺血栓塞栓症(PE)が0.5〜1%、致死性PEは0.5%未満。

    ◦ 神経損傷: 0.1〜4%。主な損傷神経は坐骨神経、大腿神経、総腓骨神経、外側大腿皮神経です。

    ◦ インプラント周囲骨折: 0.5〜3%。

人工関節の素材と技術

    ◦ 摺動面: 摩耗の軽減や長期耐用性の向上を目的として、高架橋ポリエチレンや、表面が平滑で硬性が高く傷が生じにくいセラミックオンセラミック(CoC)が使用されます。CoCは従来型ポリエチレンと比較して摩耗量が有意に少ないと報告されています。

    ◦ ナビゲーションシステム: カップ設置において、ナビゲーションシステムの使用も検討されています。

特殊な手術手技 高位脱臼股に対する転子下短縮骨切り術を併用したTHAは、平均10年以上の追跡期間で良好な長期成績が報告されており、再置換術をエンドポイントとした10年生存率は**82〜100%**です。ただし、神経麻痺、脱臼、術中大腿骨骨折などの合併症リスクが比較的高いことも報告されています。

リハビリテーション 術前通院リハビリテーションは、術後3ヵ月以内の疼痛軽減、臨床成績の改善、入院期間の短縮に有意な効果を示すことがメタ解析で示されています。

THAは、変形性股関節症による苦痛を大きく和らげ、患者の生活の質を改善するための効果的な選択肢であり、その技術と管理は継続的に進化しています。

最新の投稿一覧

-整形外科