整形外科

5.リハビリテーション医療における理学療法士の役割

病気やけが、加齢などで身体機能が低下した人が再び自立した生活を送れるよう支援する「リハビリテーション医療」は、現代の医療に欠かせない分野です。その中心的な役割を担っているのが、理学療法士(PT)です。理学療法士は、患者の身体機能を評価し、運動療法や物理療法を用いて機能回復を図る専門職として、多職種と連携しながら幅広い場面で活躍しています。

理学療法士の役割の第一は、身体機能の評価です。関節可動域、筋力、バランス、歩行能力などを科学的に測定し、どの機能が低下しているのかを明らかにします。評価によって得られたデータは、医師や作業療法士、言語聴覚士などと共有され、チームとして治療方針を決定する基盤になります。正確な評価は、その後のリハビリの効果にも直結するため、理学療法士にとって重要な業務です。

次に、運動療法による機能回復が理学療法士の中心的な仕事です。関節が固まらないように動かす関節可動域訓練、筋力を高めるトレーニング、バランス能力や歩行能力を取り戻すための動作練習など、患者の状態に応じたプログラムを立てて実施します。安全性を確保しながら少しずつ負荷を高めることで、日常生活動作の自立や社会復帰につなげていきます。

さらに、廃用症候群や再発の予防も重要な役割です。長期間の安静や入院により筋力や持久力が低下すると、寝たきりや再入院のリスクが高まります。理学療法士は、早期離床や継続的な運動習慣の指導を通して、身体機能の維持・向上を支援します。また、退院後の生活環境に合わせた運動指導や、転倒予防、福祉用具や住宅改修の提案なども行います。

このように理学療法士は、評価・治療・予防の3つの側面から患者を支え、チーム医療の中で大きな役割を果たしています。単に身体機能を改善するだけでなく、患者一人ひとりの生活や目標に寄り添い、心身の回復と社会参加を支援することこそが、理学療法士の本質的な使命だといえるでしょう。

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