整形外科

2.早期発見がカギ!変形性股関節症の初期サインと見分け方

変形性股関節症の早期発見の鍵となる初期サインと、それらを見分ける方法について解説します。

変形性股関節症とは

変形性股関節症は、関節軟骨の変性や摩耗によって関節が変形し、骨棘(こつきょく)形成などの骨増殖を特徴とする疾患です。関節リウマチのような炎症性疾患とは区別されます。日本では寛骨臼形成不全、先天性股関節脱臼、股関節亜脱臼に起因する二次性股関節症が圧倒的に多く(約80%)、近年では大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が原因となる一次性股関節症も認識されています。

早期サインと症状

変形性股関節症の初期には、以下のサインが見られます。

長く歩いた後のだるさ

運動を開始した際の痛み(starting pain)

病期の進行とともに、以下の症状が顕著になります。

股関節部の痛みが主な症状であり、大腿部や殿部に関連痛として現れることも少なくありません。特に痛みの分布は、**鼠径部(89%)**が最も多く、次いで殿部(38%)、大腿部(33%)、膝周囲(29%)、大転子周囲(27%)、腰部(17%)、下腿(8%)にも及ぶことがあります。

股関節の可動域制限跛行(歩行障害)内外旋の可動域制限が特徴的です。可動域制限のカットオフ値(内旋23°以下、屈曲94°以下など)が示されており、内旋制限が23°以下の場合、軽~中等度変形性股関節症の診断感度は86%、特異度は54%と報告されています。

見分け方(診断)

変形性股関節症は多くの場合進行性であり、長い時間をかけて病状が悪化していくため、早期の診断と介入が重要です。

診断は、主に以下の手順で行われます。

1. 医療面接(問診)と身体診察: 股関節痛をきたす疾患をリストアップし、股関節の可動域制限、鼠径部痛、跛行といった特徴的な身体所見を確認します。特に内外旋の可動域制限は重要な所見です。

2. 画像検査:

    ◦ 単純X線検査が最も基本的かつ中核となる診断方法です。X線所見で重要なのは関節裂隙(関節の隙間)の狭小化であり、その他に寛骨臼形成不全の程度、骨頭と寛骨臼の位置関係、骨硬化、骨嚢胞、骨棘、臼底肥厚、骨頭変形なども評価されます。ただし、骨棘形成が強い症例や若年者では、X線所見に比べて症状が軽度な場合もあります。

    ◦ MRI検査は、単純X線検査では描出が難しい関節軟骨や関節唇の損傷、海綿骨の質的変化を捉えることができ、変形性股関節症の早期診断や進行の観察に有用とされています。関節鏡検査も有用ですが、侵襲を伴うため診断のみを目的とする場合は慎重な検討が必要です。

早期に正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立て、病状の進行を抑制することが可能となります。

最新の投稿一覧

-整形外科