整形外科

1.「腰痛の原因は一つではない」―現代人に多い腰痛の背景と仕組み

腰痛は単一の疾患ではなく、その背景には多様な病態や疾患が存在する「症状」であるとされています。現代人の腰痛は、単一の原因に特定することが難しい多面的な要素によって引き起こされることが多く、その背景と仕組みは複雑です。

腰痛の多様な背景と仕組みには、以下のような要因が挙げられます。

1. 病態の多様性

    ◦ 腰痛の痛みは、腰部だけでなく、殿部や下肢の症状を伴うことも少なくありません。

    ◦ 腰痛は、急性、亜急性、慢性といった有症期間によって注目すべき病態や有効な治療法が異なります。

    ◦ 「非特異的腰痛(non-specific low back pain)」という診断名が安易に使われることがありますが、腰痛を訴える患者に対しては、その背景にある真の原因を特定する努力が重要です。

2. 画像診断の限界と有用性

    ◦ 単純X線検査やMRI検査は腰痛の原因診断に意義がありますが、これらの検査で認められる所見(椎間板変性など)は無症候性の人にも高率に見られることがあり、加齢に伴う生理的な変化と区別が難しい場合があります

    ◦ しかし、複数の椎間板に変性が連続して存在する場合や、椎体終板のModic変化(特にtypeⅠ)は腰痛発症の危険因子と関連することが報告されています。

3. 生活習慣と環境要因

    ◦ 喫煙や過度の飲酒は、骨折リスクを上昇させることが知られており、特に骨粗鬆症による椎体骨折は腰背痛の主要な原因となり得ます。

    ◦ 運動不足も骨量減少につながり、骨の脆弱性を高める可能性があります。

    ◦ 職業性要因としては、重量物作業や立ち仕事が股関節症発症の危険因子になるという報告があり、腰痛においても職業性腰痛に関する研究が報告されています。

4. 心理社会的因子

    ◦ 腰痛の慢性化を予測する因子として、**恐怖回避思考や疼痛破局思考といった「不適応認知」**が挙げられています。心理的な要因が腰痛の経過に大きく影響することが示唆されています。

5. 併存疾患

    ◦ 他の整形外科疾患が腰痛の原因となることがあります。

        ▪ 骨粗鬆症:椎体骨折が発生すると、急性の腰背痛や、不安定性による慢性的な腰背痛を引き起こします。

        ▪ 変形性股関節症:股関節の痛みは、最も鼠径部に現れることが多いですが、殿部、大腿部、腰部、膝、下腿に関連痛として生じることも少なくありません。そのため、股関節症が腰痛の原因として認識されることがあります。

        ▪ 変形性膝関節症:ロコモティブシンドロームの主たる疾患の一つであり、膝の痛みや機能低下が体のバランスや歩行に影響を与え、結果として腰に負担をかける可能性があります。

        ▪ その他、悪性腫瘍や内分泌疾患など、低骨量をきたす様々な疾患も鑑別診断の対象となり、腰痛の原因となることがあります。

このような背景から、腰痛の診断では問診や身体所見を注意深く行い、原因や病態を特定することが重要です。また、治療法を選択する際には、エビデンス(科学的根拠)に基づき、治療の益と害のバランスを考慮することが推奨されています。個々の患者の状態や環境、希望を尊重し、最適な治療法を医療者と患者が話し合って決定すべきとされています。

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