整形外科

骨粗鬆症の疫学と社会影響:高齢化に伴う患者増加と骨折の深刻さ

日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進んでおり、それに伴い骨粗鬆症の患者数は年々増加の一途をたどっています。現時点での推定患者数は約1300万人に上るとされており、これは医療だけでなく、社会全体にとっても極めて重要な課題となっています。

骨粗鬆症は、骨の強度が低下し、骨折のリスクが増大する骨格の疾患です。特に、椎体骨折や大腿骨近位部骨折は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を著しく低下させ、寝たきりの原因となるだけでなく、死亡率を上昇させるという深刻な合併症を引き起こします。一度骨折を経験すると、その後の新たな骨折発生の危険性が高まるため、その連鎖を断ち切ることが極めて重要とされています。

疫学的なデータを見ると、骨粗鬆症の有病率は性別や年齢によって大きく異なります。40歳以上の一般住民における骨粗鬆症の有病率は、腰椎(L2~L4)で診断した場合、男性3.4%、女性19.2%、大腿骨頚部で診断した場合、男性12.4%、**女性26.5%**となっています。これらの診断箇所を合わせて、腰椎または大腿骨頚部のいずれかで骨粗鬆症と判断される患者数は、全体で約1,280万人(男性300万人、女性980万人)と推計されています。

骨折の発生率についても、その深刻さは明らかです。特に大腿骨近位部骨折の発生数は、過去20年間にわたる調査で増加の一途をたどっており、2007年には年間約148,100人(男性31,300人、女性116,800人)に達しました。欧米諸国で発生率が減少に転じる国が増えているのに対し、わが国では依然として増加傾向を維持している点が特徴的です。椎体骨折もまた、女性で高く、加齢とともに著明な上昇を示します。これらの骨折は、痛みだけでなく、運動機能の低下、精神的負担、社会参加の減少などを引き起こし、患者のQOLに多大な影響を与えます

骨粗鬆症は、「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」である「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」の重要な構成疾患でもあります。ロコモの概念は、高齢者人口の増加とそれに伴う要介護者の増加という社会背景から提唱されました。介護保険制度が始まった2000年には220万人だった要支援・要介護認定者が、2014年には580万人に達しており、今後も増加が予測されています。骨粗鬆症による骨折は、この要介護状態の主要な原因の一つであり、ロコモと骨粗鬆症および骨折は相互に原因と結果となる密接な関係にあります。

このような状況から、骨粗鬆症は単なる老化現象ではなく、骨折という重篤な合併症を伴う「疾患」として早期からの予防と適切な治療が社会全体で求められていま

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