整形外科

見過ごされがちな続発性骨粗鬆症

骨粗鬆症は、多くの場合、加齢や閉経に伴って発症する「原発性骨粗鬆症」ですが、**特定の病気や服用中の薬物が原因で引き起こされる「続発性骨粗鬆症」**も存在します。これは原発性骨粗鬆症と病態が異なる場合があり、特に男性や閉経前の女性に多く見られるため、見過ごされがちな疾患です。

見過ごされがちな理由と骨折リスクへの影響: 続発性骨粗鬆症では、骨密度の低下だけでなく、骨質の劣化が骨折の脆弱性を高める主要な要因となることがあります。そのため、骨密度が比較的保たれていても骨折リスクが高いケースが存在し、診断が困難になることがあります。また、ステロイド性骨粗鬆症のように、骨粗鬆症の専門医以外の医師が原疾患の治療を行うことが多いため、骨粗鬆症の認識が十分に高くない場合もあります。

主な原因となる疾患と治療薬:

1. 内分泌疾患: 原発性副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、性腺機能低下症など、ホルモンバランスの異常が骨代謝に直接影響し、骨折リスクを増加させます。

2. 生活習慣病: 糖尿病(特に2型)は、骨密度とは独立して骨折リスクを約1.4~1.9倍高めることが報告されており、慢性腎臓病(CKD)、脂質異常症、高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)なども骨粗鬆症を併発しやすいとされます。

3. 関節リウマチ: 慢性的な炎症が骨破壊を促進し、全身性骨粗鬆症を招き、骨折リスクを非罹患患者の約1.5~2.4倍に高めます。

4. 治療関連:

    ◦ ステロイド薬: 長期服用は骨形成を抑制し、骨吸収を亢進させることで、骨折リスクを顕著に増加させます。

    ◦ 性ホルモン低下療法: 乳がんや前立腺がんの治療で用いられ、骨密度低下や骨折リスク上昇を伴うことが示されています。

    ◦ その他の薬剤: 特定の抗糖尿病薬(チアゾリジン薬など)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗凝固薬、抗うつ薬(SSRI/SNRI)、抗痙攣薬、免疫抑制薬なども骨折リスクを高める可能性が指摘されています。

診断と個別化されたアプローチの重要性: 続発性骨粗鬆症を適切に診断するためには、詳細な医療面接を通じて、患者の既往歴、生活習慣(喫煙、飲酒など)、服用中の薬剤、家族歴などを網羅的に聴取することが不可欠です。特に男性や閉経前女性の場合、一般検査に加えて原因疾患を特定するための追加検査(血液・尿検査など)が推奨されます。 治療の原則は、まず原因疾患の治療や原因となる薬物の減量・中止を図ることです。しかし、それが困難な場合や、骨折リスクが高いと判断される場合には、原発性骨粗鬆症と同様に積極的な薬物治療が必要となります。FRAX®のような骨折リスク評価ツールも有用ですが、糖尿病などFRAX®に含まれない因子もあるため、患者個々の臨床的危険因子と病態を総合的に評価し、個別化された治療計画を立てることが、骨折予防とQOLの維持・改善に繋がります

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