ワキガ(腋臭症)の治療(日帰り手術)

ワキガ(腋臭症)とは

腋臭症(わきが)とは、アポクリン汗腺から分泌される汗が原因で、腋の下に強い臭いが生じる状態です。この臭いは、ABCC11遺伝子が関与するアポクリン汗腺の分泌物の質に影響されており、腋臭症は遺伝的な要因で発生し、臭いが社会生活に影響を与えることがある疾患とされています。

汗の分泌腺には2種類あり、1つはエクリン腺で、さらさらとした汗を分泌します。
これは、たとえばお風呂で体が温まったときに出る汗を想像するとわかりやすいです。
エクリン腺は全身に分布しており、汗を通じて体温を調整しています。

もう1つはアポクリン腺から分泌される汗で、こちらが臭いの原因となる汗です。
この汗には脂質やタンパク質が含まれており、皮膚表面の細菌によって分解されることで、臭いが発生します。
つまり、臭いの原因は「汗や脂質などの分泌物+細菌」です。
また、アポクリン腺からは衣類に付着して黄ばみの原因となる物質も分泌されます。
これはリポフスチンという、タンパク質と脂質からなる複合体で、黄褐色の色素を含んでいるため、衣類に色がつくことがあります。

アポクリン腺は耳の中や腋の下、乳輪、陰部などに分布しており、思春期に発達します。
これには性的な機能もあるとされていますが、その程度は個人差があり、強い場合には腋臭症と診断されることがあります。
アポクリン腺が耳の中にも存在するため、湿性耳垢の人の約8割が腋臭症に罹患しているとされています。

さらに、食べ物が臭いの原因になるかについては、赤身肉や動物性脂肪、コレステロールが臭いを強めるという報告がありますが、現時点では科学的根拠は十分ではなく、その関連性ははっきりしていません。

客観的診断と治療

自覚症状と他覚症状を総合的に判断します。
当院では問診に加え、ガーゼ法を用いることがあります。
診察中にわきにガーゼを挟んでいただき、その後に臭いの強さを確認する方法です。
また、他人から臭いを指摘された経験があるかどうかも判断の一要素としています。

ただし、臭いの程度は医師の主観的な判断になるため、自臭症(自己臭症)のように本人が気にしすぎている場合もあります。
逆に、周囲が気にして来院するものの、本人には全く自覚がなく、手術を受け入れにくいケースもあります。
つまり、自覚がある場合でも、ない場合でも問題が発生することがあります。

ガーゼ法

ガーゼ法の判定レベルは次のとおりです。

  • レベル1:ガーゼが臭わない
  • レベル2:ガーゼがわずかに臭う
  • レベル3:鼻にガーゼを近づけると臭う(軽度ワキガ)
  • レベル4:鼻にガーゼを近づけなくても臭う(中度ワキガ)
  • レベル5:手に持っただけで臭う(重度ワキガ)

腋臭症(ワキガ)手術について

腋臭症手術の流れについて説明します。

STEP
受診(診断)

まずは受診していただき、手術が必要かどうか診断いたします。
手術適応の場合、手術日をご予約していただきます。

STEP
手術当日

ご指定の時間にご来院ください。

STEP
手術(マーキング・局所麻酔)

わきを90度くらいに開いた状態で手術を行います。
わきの毛の範囲をマーキングし、わきの中央を切開するデザインを行います。
切開部分およびマーキングした部に局所麻酔注射を行います。

STEP
手術(切開・剥離・切除)

皮ふを切って汗の腺・毛の下まで広く剥離します。
皮ふをひっくり返して汗の腺をハサミで切除します。

STEP
手術(縫合)

汗の腺を除去した皮ふをもとにもどして皮ふが下にくっつくように糸で縫合します。
周囲に傷の圧迫のためのガーゼを固定する糸をつけます。

STEP
ガーゼ固定

傷の圧迫のため、わきにガーゼの塊をつけて固定します。

STEP
ご帰宅

手術後は、ご帰宅していただきます。
わきはなるべく閉じている状態を約1週間続する必要があります。
シャワーは可能ですが、手術部位は濡らさないよう注意する必要があります。

STEP
ガーゼ除去(1週間後)

1週間後にガーゼの塊を除去し、シャワー可となります。

STEP
抜糸

手術から約2週間後に抜糸をします。

注意点

通常の生活を行えるのは手術から1ヶ月後となります。
抜糸が終わるまで、満員電車通勤など汗をかくような行動はお勧めしません。
また、手術から1ヶ月経過するまで、運動を控えていただく必要があります。

経過手術当日術後1日目術後7日目術後14日目術後1ヶ月
処置手術ガーゼ除去抜糸創傷チェック
安静ガーゼ固定による圧迫ガーゼ固定による圧迫圧迫解除
入浴不可シャワー可(手術部位を濡らさないよう注意)シャワー可抜糸後、湯船可制限なし
その他腕を上げる動作を控え、できるだけ脇を締め、患部を圧迫する抜糸後、日常生活可運動可

よくある質問

多汗症にも効果がありますか?

多汗症は、一般の剪除法では改善はできません。
現在の多汗症の治療で最もオーソドックスなものはボツリヌストキシン製剤治療です。

傷痕はどの程度残りますか?

ワキガの手術では、皮膚を切開して汗腺を除去するため、傷跡が残ります。
傷跡の大きさは、一般的には3~5cm程度です。
3〜6か月でかなり目立たなくなります。

入院が必要でしょうか?

日帰りで行えますが、術後は日常生活に制限があります。

入院が必要でしょうか?

当院では、単純な剪除法のみ扱っておりますので、健康保険扱いで手術を行えます。